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世界の定年退職年齢と実質労働年齢ランキング:国別比較ガイド

日本の定年制度は、企業が60歳を下限に設定し、65歳まで上限とすることが可能です。政府はさらに、定年の下限を65歳に引き上げ、上限を70歳へ拡大する方針を検討しています。

この変更は、政治家が受給開始年齢を延ばしつつ、年金制度の破綻リスクを先送りにしたいという意図があります。しかし、経済界からは人件費増加や賃金・人事制度の大幅見直しへの懸念が強く、実現には壁が立ちはだかっています。

それでも2020年までに定年引き上げを目指す動きは続いており、学術研究者を利用して「准高齢者」などの概念を普及させる試みも見られます。今後も同様のアプローチで65歳一律化を狙うケースが増えると予想されます。

世界の定年制度はどのようになっている?

OECD(経済協力開発機構)が2014年に公開した21カ国の定年退職年齢データを参照しました。
出典:OECD

世界的に見て、定年は65歳前後が多く設定されています。ヨーロッパ諸国も例外ではなく、ドイツ・オーストラリア(男性)・メキシコ・カナダ・スペイン・フィンランド・デンマーク・英国(男性)などで65歳定年制度が採用されています。

一方、チェコ・フランス・ハンガリー・イタリア・ギリシャ・スロベニア・トルコ・韓国は65歳以下に設定。USA・ノルウェー・ポルトガルなどは65歳以上です。

特筆すべきは、韓国の定年が61歳であることと、イタリアの実際の退職年齢が低い点です。これらは統計値とは異なるケースと言えるでしょう。

実質的な引退年齢(市場での平均離職年齢)

OECDデータによると、日本男性の実質引退年齢は69歳に達しています。大企業や公務員では厚生年金・企業年金が充実しているため60歳で退職できるケースもありますが、一般労働者は国民年金のみでは生活が不安定になるため、より長く働く傾向があります。

韓国の実質引退年齢は73歳と報告されており、OECD平均(約64歳)を大きく上回っています。その他、メキシコ・アイスランド・日本・チリ・ニュージーランド・ポルトガル・スイス・アメリカ・イラン・オーストラリア・スウェーデン・ノルウェー・トルコなどが65歳を超える傾向にあります。

中国は男性60歳、女性50歳の定年で、実質引退年齢は2012年時点で53歳でした。現在は55歳未満と推測されますが、日本と比べると若干低い水準です。

まとめ:日本の定年制度は適正か?

日本は世界平均より高い実質引退年齢を持ち、4位にランクインしています。もし下限を65歳に設定すれば、一部の銀行員や公務員、一定規模以上の会社員が早期退職するケースが増え、結果として実際の離職年齢がさらに上昇し、韓国を抜いてトップになる可能性もあります。

一方で、健康寿命(71歳)と定年下限(65歳)のギャップは狭く、病気による早期退職リスクがあります。したがって、上限を70歳に設定しつつ、下限は60歳のまま維持する方がバランスが取れると言えるでしょう。

結論として、日本の定年制度は「下限60歳・上限70歳」で十分に機能しており、急激な引き上げは避けるべきです。個々人の健康状態や働き方を尊重した柔軟な制度設計が重要です。

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