かつてNVIDIAのGTX TITAN Zを覚えているだろうか。2つのGPUダイと当時としては大容量の6GBメモリを搭載し、非常に注目されたエンジニアリングの結晶だった。そのTITAN Zを彷彿とさせる新たなGPUが、IntelのArcシリーズから登場するかもしれない。
VideoCardzに近い情報筋によると、IntelのArc「Battlemage」B580 GPUに、デュアルGPU・デュアルVRAM構成のモデルが登場するという。 情報源によれば、Intelの未発表のAIB(アドインボード)パートナーが、2つのB580ダイと合計48GBのVRAMを搭載したGPUの発売を準備中とのことだ。
これは、以前EEC(ユーラシア経済委員会)への提出書類で確認された24GB VRAM版のArc B580が事実上存在することを裏付ける内容であり、今後近いうちにその製品が展示される可能性がある。
BMG-G21チップは最大20基のXeコアと2,560のシェーダーユニットを備えており、これを2基搭載する構成では、合計40 Xeコアと5,120のシェーダーユニット、そして48GBのVRAMが協調して動作するという驚異的な仕様になる。
このようなモデルは、明らかにゲーマーよりもAI開発者やエンスージアスト層を主なターゲットにしている。現時点で48GBものVRAMを要求するゲームは存在しないが、それでもこのアプローチは技術的に非常に興味深い。
また、Intel Arc PRO A60/B60という名の、B580ダイと24GB VRAMを搭載したプロ向けカードが噂されており、ローカルAI処理やプロフェッショナルなビジュアライゼーション用途に特化している。このGPUが、今回噂されているデュアルB580・48GB VRAM構成のベースになっている可能性もある。
より詳しい情報は、約1週間後に開催されるComputexで明らかになると見られており、注目が集まっている。
スペック的にはB580×2で、BMG-G21がそれぞれ20 Xeコア/2560 ALUs(≒Shader Units)ってことは、合計で40 Xeコア/5120 ALUs。純粋な数値だけ見ればなかなか壮観。ただしこれ、メモリはNVLinkみたいな共有じゃなくて各ダイごとのローカルVRAM構成っぽいから、48GB全部を単一プロセスが一括で使えるわけではない点は注意。
TDPも190W×2=380W。高確率で12VHPWR(Gen 5)対応のATX 3.0電源が前提になりそうだし、実効消費電力も瞬間で跳ねるだろうから、電源の買い替えは見越しておいた方がいい。
性能的にはRTX4060クラス×2構成と見るのが妥当なので、ゲーミングでRTX4090や次世代5090と比較するのは筋違い。単体性能で勝負するGPUじゃない。むしろ本命はAI用のローカル推論環境。ComfyUIみたいなノードベースの分散処理系なら、VRAMの分割もさほど障害にならずにスケールできる可能性がある。DirectMLとの親和性やWinML対応の改善が進めば、案外実用路線に乗ってくるかもしれん。
とはいえ、AIやるなら最初のGPUは無難にNVIDIAにしておいた方がいいのは間違いない。PyTorchもTensorFlowもCUDAが基本で、IntelのoneAPIやOpenVINOはまだ開発者コミュニティが狭く、エコシステムで遅れてる。Intel GPUに最適化されたAIモデルなんて現状ほとんど無いし、TransformersのINT4最適化ですらNVIDIA主導。最初の一枚目にIntelを選ぶのは、だいぶ上級者ムーブ。
価格は単純計算でB580が仮に1枚5万円だとして、×1.5(プロ向け調整)×2枚で15万円なら納得感アリ。むしろ24GBのシングル構成で7〜8万円台出してくれた方が、AI初心者のエントリーモデルとして魅力あるかも。
未来的には、IntelがMicrosoftあたりとガッツリ組んでDirectMLやONNXランタイム周りを強化すれば、CUDAエコを揺さぶる存在になれるかも。ゲームはAMD、AIはIntel、NVIDIAが板挟みで中途半端になる……なんて構図もワンチャン?
……とは言っても、まずは本当に出るかどうかが一番の問題なんだけどね(笑)。株価は安定して安いし、円も弱ってるから、先にIntel株ちょっと仕込んでおくべきだったかも。