SNSや動画のコメント欄で、「この芸能人、○○にそっくり」といった発言をよく見かけます。しかし、そうした比較が的外れに感じられることも少なくありません。たとえば、若い頃の薬師丸ひろ子と齋藤飛鳥を混同するコメントなど、「似ている要素が見当たらないのに?」と思ってしまう例が増えています。
これらの現象の背景には、顔認識能力(Face Recognition Ability)の個人差が大きく関わっている可能性があります。
■ 顔認識能力は人によって大きく違う
人間の顔認識能力は、知能指数や学歴とは関係なく、脳の視覚処理機能や記憶力の特性によって大きく左右されます。特に以下のように、能力には明確な個人差があります:
- スーパーレコグナイザー(Super Recognizer):ほぼすべての顔を瞬時に識別できる特殊能力者(人口の約1〜2%)
- 相貌失認(Prosopagnosia):他人の顔を見分けることが極端に苦手な状態(約2%)
- 境界的顔認識能力:診断基準に達しないが、平均より劣るグレーゾーン
多くの人はこの中間に位置しており、認識しやすい顔とそうでない顔があるというのが実際のところです。
■ 境界的な顔認識能力とは?
「中山美穂さんの写真を見ても、一部は本人だと分からないことがあるけれど、松田聖子さんならどんな写真でも間違えない」
このような体験を持つ人は、顔認識能力が平均よりやや低いグループ(境界的能力)に当たる可能性があります。境界的といっても、日常生活に支障が出るとは限らず、
- 他の手がかり(髪型、声、服装、立ち居振る舞いなど)を使って補っている
- 環境への適応力で問題を回避できている
といったケースが多く見られます。
■ 顔認識能力が低いと、どんな社会的リスクがある?
顔を覚えるのが苦手というのは、実は以下のような社会的な摩擦や誤解を生む原因になることがあります。
- 取引先や同僚の顔を思い出せず、失礼になる
- 接客業などで常連客を識別できずに不快感を与える
- 学校や職場で名前と顔が一致せず、信頼関係が築きにくい
ただし、顔認識能力の低さが問題になるかどうかは、本人が状況に応じて対処法を持っているかどうかで大きく変わってきます。
■ 実例:筆者の体験
筆者自身の例で言えば、社会人として四半世紀働いてきて、人を見間違えたり、顔を覚えられずにトラブルになった経験はありません。しかし、中山美穂さんの若い頃の写真などを見ると、「これは本当に本人?」と一瞬戸惑うことがあります。
このような感覚から、自分は平均より少しだけ顔認識能力が低めではないかと自己分析しています。重要なのは、その事実を自覚していることが対処の鍵になるという点です。
■ 自分の顔認識能力を知ることの意義
現代のように、写真や動画が大量に共有され、芸能人や著名人の情報が飛び交う社会では、「顔を認識する力」は以前よりも注目される能力になっています。
自分がどの程度の顔認識能力を持っているかを把握しておくことで、
- 自分に合った対人スキルを身につける
- 他人の言動への理解や共感力を高める
- 他者と自分の能力の差を受け入れる
といった柔軟な対応が可能になります。
■ 無料で試せる顔認識能力テスト
顔認識能力は、以下のような無料のオンラインテストで簡単に測ることができます:
- Cambridge Face Memory Test(CFMT)
→ 標準的な顔認識能力を測定する英語のテストTake some brain tests and contribute to science! TestMyBrain builds high-quality digital cognitive testing tools for the research and education communities. - Face Blindness Questionnaire(相貌失認自己チェック)
→ 自覚的な顔認識の困難を問うアンケート形式(英語)The official site of the Prosopagnosia Research Center at Dartmouth, Harvard, and University of London. Faceblind.org aims to provide a better understanding of ...
■ まとめ
顔認識能力は、人間関係の基礎にも関わる重要なスキルです。しかしこれは、誰もが同じレベルで備えている能力ではありません。極端に高い人もいれば、低い人、そしてその中間にあたる人も存在します。
自分自身の顔認識能力を知ることは、対人関係における摩擦や誤解を避け、より豊かな社会生活を送るうえで大きなヒントになります。
まずは一度、オンラインテストなどを使って自分の傾向を知ってみてはいかがでしょうか。
