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自民党は石破総理に「戦後80年見解」の発出もやめさせるべきだ

── 談話の形式を変えても国益を損ねる危険は変わらない

はじめに

2025年8月15日を前に、石破茂首相が「戦後80年見解」の発出を検討している。閣議決定を伴う首相談話ではないとはいえ、総理の歴史認識を国内外に示す意味は大きく、事実上の新たな談話として受け取られる可能性が高い。

この見解発出に対しては、自民党内からも反対の声が上がっており、青山繁晴参院議員は「安倍晋三元首相による戦後70年談話を上書きすることは、国益に反する」として明確に反対の立場を表明している。

ではなぜ「戦後80年見解」の発出が国益に反すると言えるのか。以下、感情論ではなく、あくまで国益に資する外交・安全保障・歴史戦略の観点から論理的に検証する。

1. 外交メッセージの一貫性が崩れるリスク

国家が発信する歴史認識や謝罪のメッセージは、外交メッセージとしての「一貫性」と「確からしさ」が重視される。

安倍元首相の70年談話は、「村山談話」「小泉談話」を踏襲しつつも、「未来の世代に謝罪を続けさせるべきではない」と明言し、一定の区切りをつけた。この「反省しつつも謝罪の連鎖を断つ」姿勢こそが、国際社会において日本の立場を安定させた。

それを総理の交代にあわせて、再び「見解」という名の歴史認識を示せば、日本の歴史観は政権によって都度変わるものだという印象を国際社会に与えてしまう。このような不安定な姿勢は、特に中国や韓国のような歴史カードを外交交渉に利用する国に、「日本は揺さぶれば応じる」という誤ったメッセージを与えることになる。

2. 謝罪や反省の「見解」が新たな外交カードにされる可能性

形式が談話でなくとも、総理による見解は事実上の「談話」として扱われる。過去にも総理の発言一つで外交問題が発生した例は数多い。

特に中国や韓国は、「総理見解」に含まれた文言(たとえば「加害」「責任」「お詫び」など)を切り取り、国際世論への工作や国内向けの反日正当化材料に利用してくる可能性がある。

例えば、G7や国連での対中・対北朝鮮包囲網を形成しようとしている現在、日本が再び「歴史問題」で軟化したように見えれば、アジア諸国間の結束が崩れる懸念すらある。

3. 保守層との分断と政権基盤の弱体化を招く

現在の自民党政権は、保守層の支持を中核として維持されている。その中で、石破首相が個人的な歴史観を「見解」という形で前面に出すことは、保守層との亀裂を深める危険がある。

特に、安倍晋三元首相が築いた「戦後70年談話」は、保守層と国際社会との折り合いをつけた絶妙なバランスであり、それを動かせば政権の支持基盤そのものを揺るがす結果にもなりかねない。

自民党が党として政権の安定と継続を望むなら、政権基盤を不安定化させる「見解発出」は早期に撤回させるべきである。

4. 安倍談話を「国の遺産」として尊重すべき

安倍談話は「日本国にとっての一つの財産」である。

これは、戦後日本の歴史観を「反省」しつつも、「未来志向」へと転換した一つのマイルストーンであり、国内外から一定の評価を得ている。

仮にこれを「上書き」するような見解が発出されれば、「日本は過去に固執し続ける国」というネガティブな印象を再び国際社会に与えることになり、外交戦略上の損失は計り知れない。

政権交代ごとに歴史認識を変えるべきではない

政治家個人の歴史観が、国全体の外交姿勢に影響を与えるような事態は避けなければならない。

政権が代わっても、「国家としての対外メッセージ」は安定的かつ一貫したものであるべきであり、過去に交わした談話の重みを軽視することは、結果として国益を損なう。

自民党は、政権与党としての責任を果たし、石破首相に対し「戦後80年見解」の発出も控えるよう、党として正式に働きかけるべきである。

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