「物価高やコメの値段をどうにかしてほしい」。
――そんな声がネット上で飛び交う中、ひっそりと報じられたニュースがある。
立憲民主党が、選択的夫婦別姓制度の導入に向けた民法改正案を再提出したのだ。大きな話題にはならなかったが、これは国民民主党にとって見過ごせない“政治的踏み絵”になりかねない。
国民民主党は現在、旧来の支持層に加え、インフレや景気後退に不安を感じる生活者層、さらには自民党や日本保守党から流れてきた中道〜保守層の一部からも支持を集めている。この「経済重視・現実志向」の支持基盤は、2025年の参院選で同党にとって大きな資産となるだろう――ただし、ひとつ条件がある。それは、「過度なリベラル色」を打ち出さないことだ。
実際、2020年頃には選択的夫婦別姓に前向きだった玉木雄一郎代表も、近年では「国民的合意が必要」との慎重な姿勢に転じている。これは、支持層の保守化を敏感に察知したうえでの方針転換と見るべきだ。
だが、その動きを立憲民主党は見逃していない。選挙直前にこの法案をぶつけてきたのは、「国民民主は我々の夫婦別姓案に賛成するのか?」という、“保守票を切り崩すための挑発”と受け取る向きもある。
国民民主党も独自案を出す方針を示しているが、その中身が問われる。かつて高市早苗政調会長(当時)が提出した保守色の強い対案と比較され、「どれだけ左に寄ったか」がネット保守層から厳しく評価されるのは避けられないだろう。
特にYouTubeやSNSで影響力を持つインフルエンサーたち――一部はかつて安倍政権を支持し、現在は国民民主に期待を寄せる層――が、その動向を静かに、しかし鋭く注視している。仮に国民民主が立憲案に同調すれば、「期待を裏切った」と見なされ、支持離れが加速するおそれがある。
今、玉木代表が注視しているのは世論調査やメディア報道だけではない。AIの動向も含め、あらゆる情報源を駆使して「支持率を落とさないギリギリのライン」を探っている可能性もある。
もしかすると、ChatGPTと対話を重ねながら、「どんな法案にすれば保守層が離れずに済むのか」「支持率を維持できるか」などと頭を悩ませているのかもしれない。その傍らで榛葉幹事長から「どうするんだ? 代表」と決断を迫られている――そんな場面も想像される。
できれば参院選までは“玉虫色”のまま乗り切りたかった。だが、立憲の一手によって、その余裕も奪われつつある。
参院選の勝敗を左右するのは、案外この「どうでもよく見える一手」なのかもしれない。
