1. 温暖化の科学的コンセンサス
気候学の世界では、過去150年ほどで地球の平均気温が急激に上昇していることには一定のコンセンサスがあります。氷床コアや海底堆積物の分析によって80万年前までの気候変動が推定されており、その中で現代の気温上昇は速度が異例に速いと考えられています。
つまり「温暖化しているかどうか」という点で、学者の間に大きな異論は少ないのが現状です。
2. 科学からビジネスへ
温暖化問題はもともと科学的な懸念から始まりました。しかし現在では、科学の枠を超えて「ビジネス」としての側面が大きく広がっています。
まず国際政治の場では、各国が「温暖化対策」を掲げることで、国際的な資金の流れや産業政策をコントロールできるようになりました。典型例が排出権取引市場です。企業や国が「排出枠」を売買する仕組みですが、これは本来の目的である削減以上に、巨大な金融商品・投資市場として成長しています。
さらに、再生可能エネルギー関連の補助金や投資も大規模です。太陽光や風力といった再エネは技術的課題(発電の不安定性や土地利用問題)を抱えていますが、「温暖化対策」という旗印のもと、巨額の資金が投入され続けています。ここでは「科学的に最適かどうか」よりも「投資先として回収できるかどうか」が優先されがちです。
研究者にとっても、温暖化は「研究費を獲得しやすいテーマ」となっています。多くの国で政府研究費や国際的な助成金が重点配分されるため、若手研究者がキャリアを築くには温暖化分野に乗るのが最も有利です。研究者の多くが「温暖化が深刻だ」と強調する背景には、こうした構造的な事情も無視できません。
そしてメディアにとっては、「危機を煽るニュース」の方が圧倒的に視聴者の関心を集めます。科学的に地道な改善策(高効率火力発電やCO₂回収技術)が報じられることは少なく、「このままでは○年後に地球が危ない」といった見出しの方が繰り返し流されます。結果として、世論も「温暖化=危機」という印象を強め、政策や投資を後押しする循環が生まれます。
こうして「温暖化は科学であると同時に巨大なビジネス」へと変質しました。科学的な知見をベースにしながらも、その運用は政治的・経済的利害に強く影響されているのが現実です。
3. 方向性の歪み
本来なら、温暖化対策には二つの方向性が考えられます。
- 排出を抑制する(CO₂を出さない)
- 排出されたCO₂を除去・固定化する
現状は「排出ゼロ」が政治的スローガンになり、太陽光や風力などが優先的に推進されています。しかし実際には、
- 最新の火力発電は旧式の1/3以下の排出量で、まだ進化の余地がある
- CCUS(CO₂回収・利用・貯留)技術は実用化が進みつつある
といった「現実的で即効性のある解決策」が軽視されがちです。
なぜか?
それは「削減よりも除去の方が効率的」であると広く認められてしまうと、温暖化ビジネスが縮小してしまうからです。既得権益の構造が方向性を歪めているのです。
4. 科学と政治・メディアのねじれ
温暖化の科学的基盤は確かに存在します。しかし、その対策の選択肢が「科学的合理性」ではなく「政治的・経済的利害」によって決められている点が問題です。
結果として、
- 学者は「就職先を守るための温暖化研究」
- 政治は「票と補助金」
- メディアは「危機を煽るニュース」
という構造に囚われ、合理的な議論が後回しになっています。
5. これから必要なのは?
温暖化を否定することは、天動説の時代に地動説を唱えるようなものかもしれません。学術界や国際的な枠組みの中では「温暖化が進んでいる」というコンセンサスが出来上がってしまっているからです。したがって、「温暖化そのもの」を論破しようとしても大きな反響は得られないでしょう。
しかし、だからといって「温暖化対策の方向性」までが正しいとは限りません。むしろ議論すべきはここです。現在の主流は「排出ゼロ」を目標にしたスローガン型の対策ですが、それが本当に合理的かどうかは疑問が残ります。
第一に、現実的な技術の活用です。
再生可能エネルギーは重要ですが、発電量が天候に左右されるため、大規模な安定供給には限界があります。その一方で、最新の火力発電技術は従来の半分以下のCO₂排出で電力を供給でき、さらに改良が進んでいます。既存の設備を高度化し、排出を抑えながら利用する方が短期的には効果的です。
第二に、排出されたCO₂を効率的に処理する技術の推進です。
すでに世界ではCCUS(回収・利用・貯留)技術が実用段階に入りつつあります。工場や発電所の排気からCO₂を吸収し、地下に固定したり、化学原料として再利用する取り組みも始まっています。これらの方法は「出すな」ではなく「出たものをどう扱うか」というアプローチであり、経済性や即効性の面でも現実的です。
第三に、政治やメディアのバイアスから距離を取る姿勢です。
危機を煽る言葉やスローガンはわかりやすいですが、それに流されると「誰かが得をする対策」に偏ってしまいます。本来必要なのは、科学と技術の両面から「もっとも効果が高く、もっとも持続可能な解決策」を冷静に選ぶことです。
結局のところ、温暖化は科学であると同時にビジネスでもあります。私たちがこれから必要とするのは、「温暖化は本当にあるのか?」という二元論ではなく、「温暖化を前提にするなら、どの対策が科学的にも経済的にも合理的なのか」を問い直す姿勢です。そのとき初めて、科学とビジネスのねじれを正し、未来に資する選択ができるでしょう。
