ドイツ・北ライン=ヴェストファーレン州(NRW)で9月14日に予定されている地方選挙を前に、候補者の死去が相次いでいる。テレビは報じず、保守系ネットニュースでは「極右政党AfDの候補者が6〜7名死亡」と強調されがちだが、実際にはAfD以外の複数の党派からも候補者が亡くなっており、合計で16名にのぼることが確認されている。
AfD候補の死去が注目を集める理由
AfDはドイツ国内で強い賛否を呼ぶ政党であり、候補者が短期間に複数亡くなった事実は、当然ながら陰謀論や政治的妨害の憶測を招きやすい。特に59歳や66歳といった比較的若い候補者の死亡も含まれており、「老衰ではない年齢層」という点が強調されると、不自然さを覚える人も少なくない。
しかし、死亡者はAfDに限られない
実際のところ、今回の選挙で亡くなった候補者はAfD以外の政党や市民団体にも広がっている。報道によれば、SPD(社会民主党)、緑の党、自由民主党(FDP)、動物保護党、自由選挙人(Free Voters)、UWG(独立有権者団体)、国民投票党、さらには地域の有権者グループからも候補者が亡くなっている。
これらはイデオロギー的に多様であり、左右の両極を含んでいることが特徴だ。
亡くなった候補者が所属していた政党とイデオロギー
- SPD(社会民主党):中道左派、労働者・福祉重視
- 緑の党(The Greens):左派・リベラル、環境政策中心
- FDP(自由民主党):中道右派、経済自由主義
- AfD(ドイツのための選択肢):右派ポピュリスト、移民制限・保守主義
- 動物保護党:小政党、動物福祉・倫理的課題に特化
- 自由選挙人(Free Voters):中道、地方分権志向の市民団体型
- UWG(独立有権者団体):無党派系、地域密着型の独立グループ
- 国民投票党:直接民主制を推進する小規模政党
このように、右派だけでなく左派や中道勢力にも死亡例が見られる。したがって「AfDが狙われた」とする単純な構図では説明できない。
当局の見解と今後の対応
警察や選挙管理当局は「死亡はいずれも病気や自然死、事故によるもので犯罪性は認められていない」としており、候補者数が約2万人と多いことから、一定数の死亡が出るのは統計的にあり得ると説明している。
また、選挙管理当局は候補者の急逝に備えて補欠候補を制度的に登録しており、選挙実施に支障はないとしている。
結論
AfD候補者の相次ぐ死は確かに衝撃的であり、政治的関与を疑いたくなるのは自然だ。しかし、全体像を見れば、死亡は複数の党派にまたがり、左右両方の候補者が含まれている。現時点で「特定の勢力による攻撃」と結論づける根拠はなく、むしろ問題は「短期間に多くの候補者が亡くなっている」という現象そのものにある。
結局のところ、最終的な判断は当局の調査を待つしかない。ドイツ当局は引き続き候補者の死因を精査しつつ、選挙の公正性と透明性を確保する姿勢を示している。
