わらしべ親切

どす黒い雨雲とピーカン晴れの空が混在する妙な天気の日だった。

午前中はずっと晴れで予報も晴れのち曇りで少し遠いダイソーに一旦寄って近くの格安スーパーに買い物に出かけた。

浴室前に置く珪藻土マットをダイソーに買いに行った。

当初は500円の珪藻土バスマットを手に持ったがあまりに大きすぎるのでどうしようか悩んでいた。

キッチンコーナーにちょうど半分のサイズの食器用の珪藻土水切りマット300円(税別)を見つけたのでそれをゲットした。

厚さは同じなので吸水力は500円サイズでも300円サイズでも一緒だ。

サイズ半分で縦20cmしかないので足がはみ出る。

それでもこれくらいコンパクトの方が捨てる時に楽でいい。

話を戻しマットを買ってダイソーから外に出ると突然の土砂降りで止みそうにないのでそのままびしょ濡れでスーパーまで移動した。

最近は晴れ男を改名して雨男にでもしなきゃいけない。

スーパーで雨に濡れた身体から気加熱を奪われながらひと通り買い物をしレジに並んでいた。

前の人がカートにあり得ないほど山盛りに積んでおりレジの列が長くなり出した。

びしゃびしゃでレジでも待たされて普段だったらカリカリきていたが何故かその日は平静だった。

そして並んでいる客が多くなったため隣のレジにヘルプのレジ打ちが入る。

自分はカード払いで隣は現金専用レジなので店員に呼ばれてもいけない。

隣のレジが商品棚で死角になっている後ろに並んでいたお婆さんとおそらく付き添いのお孫さんに「もし現金払いなら隣のレジに移った方が早いですよ」と笑顔で声をかけた。

マスクをしていたので相手に表情はわからないと思うが昔使った営業スマイルで。

普段はそんな親切な人間では無いがその日は何故か魔が差したのか善人ヅラをしてしまう。

お年寄りは順番を奪われまいと無言で凄い勢いでカートを押して隣のレジに移っていった。

この店の客層だとそんなものだろうと苦笑いをしたがお孫さんだけは会釈をしてくれゆっくりとそのBBAもといお婆さんのところについて行った。

そして会計が終わり商品をエコバックに入れていたらさっきのお孫さんがワンショルダーっぽいバックを抱えて後ろをパタパタと走り抜けていった。

ん?

エコバッグを抱えながら外に出ると他の夫婦連れの旦那さんに渡してお礼を言われていたので買い物整理の作業机に忘れていったバッグを渡していたらしい。

いいことというのは連鎖するんだとちょっといい気分になって駐輪場から自転車を出して駐車場を抜けようとしたら今度はその夫婦が別のお婆さんにジェスチャーで説明をしていた。

マジマジと眺めているのも怪しいのでそのまま自転車で通り過ぎたがお婆さんに何かの案内をしていたようだ。

この様子を通して知っているのは自分だけ。

思わずニヤリとした。

横の列空いてますよみたいな声がけは普通の人なら日常的にやっている行為だろう。

でも自分が普段はしないような小さな親切が連鎖したと思うと気分がいい。

もしかすると何かを聞いていたお婆さんはあのご夫婦じゃなくても他の誰か捕まえて尋ねたかもしれない。

でも親切の輪廻はめぐるものだと思い込みたい。

普段このスーパーマーケットは経済的余裕がないお客さんが多いためか精神的にも余裕が無いようで店内の客層全体的に辛気臭さが漂っている。

普通のスーパーのような買い物を楽しむ感じは伝わってこない。

生鮮食品コーナーではお年寄りが幾つものパックをベタベタ触りまくり少しでも大きそうなのや新鮮そうなの吟味している。

そしてクレーマーBBAもよく見かける。

以前見たのは(おそらく)レジ打ちで商品をカゴからカゴへ移す所作が気に入らなかったらしく他の店員に詰め寄って賠償だ!店長出せ!とか小学生のような文句を叫んでいたり殺伐としている。

このクレーマーBBAと買い物の時間帯が同じなのか居合わせると毎度文句を言っている。

痴呆でも入っているんじゃないか。

いつか最初から話を聞いてスカッとのように気の利いたセリフで従業員を庇えるタイミングがないか虎視眈々と狙っているのだがあんなフィクションのようにはいかん笑

でもたまにはこんないいシーンに出くわすとほっこりする。

わらしべというより掃き溜めに鶴みたいなので書き留めておこう。


おすすめ記事

ためになる記事だと思ったらシェアおねげえします

フォローする